喪失した80年代

よく言われているけど、日本とアメリカのヒーローの違いというのは、変身と仮装の文化の違いである。仮面ライダーウルトラマンは、あれが本来の姿である(今のは違うかもしれないけど)。ピーター・パーカーとクラーク・ケントは、結局のところ、服を脱いでも、ギフトを授かったスパイダーマンでスーパーマンである。ブルース・ウェインは人より力持ち、金持ちなだけだから、他の変身、ギフト持ちヒーローから見れば、痛いコスプレ野朗にしか見えない。とどのつまり、「ウォッチメン」はそういう痛い人達の映画。

ウォッチメン」の出来が良すぎて感動する。っていうか、傑作だろ。なんで日本でヒットしないのかな……「ダークナイト」もそうだけど……。

やっぱ、アラン・ムーアの実写化はほぼ地雷。ギリアム版が観たいなんて、誰も言わないに違いない。

ロールシャッハのカッコよさよりか、史実から歪められ、荒廃した80年代のアメリカがたまらん。「ダークナイト」という映画が、拙僧達が生きる現代を舞台にしているのとは対照的に、こっちは喪失した過去を舞台にしているかのよう。

飛行船、ニクソンの看板、雨の摩天楼、ローテクなのかハイテクなのかよく分からん会議室、マンハッタンさんのグダグダ話でさえも、ディストピア映画の趣が漂い、あの漫画独特の終末観が、こうして映画という媒体で観れるのは幸せである。そういえば、この映画(漫画)のヒーローはよく雨に濡れていた。特にロールシャッハが。ハードボイルド映画で、よく雨に濡れるやつの末路は決まっている。

映画の出来は良かったけど、サイモン&ガーファンクルと、ワルキューレの音楽を使う場面が、あまりにも「そのまんま」なところで使い、思わず恥ずかしくなってしまった。これは、ザック・スナイダーのご愛嬌なのかもしれない。