サブウェイ123
「エネミー・オブ・アメリカ」「スパイゲーム」で好きになり、「マイ・ボディガード」が映像がゴチャゴチャした傑作で、「ドミノ」で何かおかしくなって、「デジャヴ」がおかしな方向に行ったら、面白くなって帰ってきた。ハリウッド最後の冒険映画監督野郎トニー・スコット。今作でも、妙な擬似家族関係と、巨大監視モニター、沢山の橋(相変わらず、このオッサンの映画のオチは橋である)が出てきて、いつものトニー映画である。
とはいえ、一般的なトニー映画によく言う「映像がゴチャゴチャしてて、訳ワカメ」している作風は、前作の「デジャヴ」よりは抑えられていて、ああやっとトニーも、細田守の「サマーウォーズ」のように、監督の作風が安定してきたのだな。と、安心していたら、現金輸送車が意図もせずにクラッシュする、スナイパーがネズミにかじられて意図もせずに犯人射殺という展開に突入。「アレコノエイガナンカオカシイゾ」。この意図もしない展開は、ジョニー・トーの「PTU」での刑事がバナナの皮で滑る以来の展開かもしれない。
「そうか!これはもしかしたらスラップスティックなコメディ映画かもしれない!さすがトニー!」と勝手に解釈した瞬間に、交渉人でジョン・タトゥーロ(最近のトランスフォーマーで「タマの下にいる!」と叫んだ元セクター7の人)、ニューヨーク市長と言ってるけどどうみてもカタギには見えないジェームズ・ギャンドルフィーニ(ソプラノさん)の登場。「うわっ!無能そう!」。その考えが確立する。終始、真面目な方向なのに、こいつらの存在が気になってしょうがなく、この映画のラストで何も心に残らないのは、もしかしたらこいつらのせいかもしれない(もちろん良い意味で)。
どうでもいいけど、今作の音楽が滅茶苦茶良い。「MGS4」を経ているハリーの音楽は、師匠のジマーとは随分、曲風が良い感じで変わってきていい感じ。「デジャヴ」でもそうだったけど、ギターが出てくるところでもう泣けてくる。
まだそこにいるの?帰る家ないの?
暇じゃないのに、暇のつもりだったので、積んでいたゲームを消化していたら、「キルゾーン2」のエンディングに感動する。どことなく、フォントの配置とか、デザインとかが、カイル・クーパー風。
エンディングクレジットで客を帰さない工夫は、自分にとって知る限り「グレムリン2」だった。今のところピクサーがそれに関して一番上手い演出をしている気がするけど。
オープニング、エンディングクレジットだけを製作している製作会社。この会社のHPで見れるクレジットが凄いことになっている。「ワールド・オブ・ライズ」の監視萌え画像。「究極ボーン」のエシェロン萌えエンディング。「キングダム」のすぐに分かる石油史。ダコたんの新作である「プッシュ」のWWⅡ後の諜報員史。「ファイナル・デッドサーキット」は、何だか残虐行為展覧会になっている(何故か3D版もアップされているバカさがいい)などなど、一見の価値はあるクレジットばかり。
私がホームズだ!
テレ東でやってて驚いた。これがガイ・リッチーの映画だということ以外に、ダウニーが「奥さん、決して怪しいものじゃありません」
……んなわけねーだろ。
アイアンマン最後の台詞が、頭の中でリフレインしているダウニー版ホームズ。「スキャナー・ダークリー」から「トロピック・サンダー」まで、ダウニーのフィルモグラフィーを見ていると、ますますダメ人間にしか見えない。推理より、殴るほうが先に出る体育会系蛮族探偵臭がたまらん。あと、ワトソンとのゲイ臭さも。
女性嫌いっていうキャラ設定がツボ。
バケモノガタリ
「アバター」の前に、世界で四台あったIMAXカメラを一つぶっ壊したことで有名な「ダークナイト」を川崎の映画館へ行く。
かつての品川か、近所の科学館で上映されていたようなオムニアックス(円形状のドームに、魚眼のレンズで投影するIMAX)のようなものを想像していたら、横長スクリーンをただデカくしたものだけだったので、少しガッカリする。
が、これがなんともヤバかった。なにがヤバいって、画質が。滅茶苦茶デカいスクリーンに35ミリと70ミリを交互に引き伸ばしているから、画質が劣化していると思っていたら、画質が更に向上していやがる。これが70ミリDMR威力なのか。空撮とかの、奥行きとかが物凄いことになってるぞ。
劇アニメ並にディテールやレイアウトがコントロールされた「ダークナイト」が、IMAXによって、その威力が更に発揮されているのかもしれない。
「凄い。凄い。レイチェルが更にブサイクになっている〜。凄い」と、白痴みたいに、凄いとしか言えなくなる。
音響もかなり良い。良いというか、喧しい。ジマーの精神的嫌悪音集、ジョーカーのテーマの超重低音で、座席が震えていたのには驚いた。
大画面で音がバカバカ鳴るよ!という小学生的欲望と、床の小石から、デントの奥歯、ジョーカーさんの鼻の穴まで見れるよ!という中学生の感想文のようなことを言ってもよく分からないと思うので、百聞は一見の何とかっていうから、今すぐ2000円を持って観に行け。と言う価値はある映画体験だと拙僧は思いました。
キムチ・ウエスタンって美味しいの?
「バッド・グッド・ムービー(スカした芸術系映画)よりグッド・バッド・ムービー(良質なB級娯楽映画)を標榜する監督ならではの快作」と、何処かで「スキヤキ・ウエスタン・ジャンゴ」のとき謳っていた。
「グッド・バッド・ウィアード」。相変わらず「シュリ」から銃撃戦をしっかり撮れるお隣が羨ましい。なんちゃって西部劇が空回りしていた「スキヤキ〜」。マシな銃撃を一本も撮る事ができないこの国に失望した作品である「亡国のイージス」(阪本さんなのに!)や「フリージア」なんかに比べれば、この映画は全然マシな方の出来です。冒頭の長カットで見せる列車襲撃、劇判、タイトルドーン!という、ボンクラ方程式からまず、日本のソレと違うもん。
一見すれば、岡本喜八の「EAST MEETS WEST」の雰囲気に似ているけど、満州占領下の朝鮮の荒野で、お宝争奪戦という内容が、山田正紀の「崑崙遊撃隊」のようで燃える。アナルネタ(カンチョーで日本軍を全滅させるタイ映画を見たな……)「G.Iジョー」から、やたら脱ぎまくるイ・ビョンホンとか、遊びに遊びまくっている本作。スタッフ、キャスト全員で記念ポーズをした写真を、よりによってエンドロールに掲載するという、「ギララの逆襲」以来の壮絶に寒いものも見ることができます。